物理学ってどんな学問?

物理学は、自然界で起こる様々な現象の基本法則を解き明かす学問です。自然界の法則というと、原子や素粒子などのミクロな世界の成り立ちとそれらを理解するために必要な量子論、広大な宇宙空間において時間と空間を結びつける相対論が思い浮かぶことでしょう。これら極限の世界で成り立つ新しい法則を探ることは、現代物理学の重要なフロンティアの一つです。

私たちの周囲にある世界に目を向けましょう。物質は、固体・液体・気体・プラズマなどの姿を示し、また固体は金属や半導体、磁性体、超伝導など、様々な性質を示します。物理学はこれらの性質を理解する基礎を与えます。最近は生命現象に対する物理学も発展しています。さらに物理学は、現代の先端的な科学技術の基盤学問でもあります。例えば、今日の情報社会を支える半導体技術や、様々な用途で用いられている半導体レーザー技術は、原子と電子の物理学なしには成しえなかったものです。さらに、近未来のIoT社会の実現に不可欠なエネルギー物質やエネルギーハーベスト技術の基盤は、物理学の新しいフロンティアになりつつあります。このように物理学は、現在そして未来の科学技術の根幹を支える学問です。

人材育成目的とアドミッションポリシー

物理学類では、多様に発展する現代物理学について、しっかりとした基礎と高度な専門的知識を備えるだけでなく、真理を探究する過程を通じて育む柔軟な思考力、そして、物事の本質を洞察し問題を根本から解決する能力を持つ人材を育てます。そして、それらの人材がそれぞれの能力を生かして社会の様々な分野で活躍することを目的とします。

このため、物理学類では、高等学校のさまざまな科目について基礎学力を有し、それを元にさらに物理学を深く学ぶ能力ある学生を求めています。また、広い視野を持ち、自ら学び、未知の物事に対して柔軟に対応できることが要求されます。

筑波大学物理学類の特徴

物理学類には60名以上の教員が在籍し、講義・演習・実験・セミナーなどを担当しています。これらの教員は、10の研究グループに属して様々な分野で最先端の研究を進めています。4年生では、これらのグループのいずれかに属して卒業研究を行います。卒業生の多くは大学院生に進学し、学類で学んだ物理学の知識を基礎に、最先端の研究に取り組んでいます。また、物理学類の教員の多くは研究センター(計算科学研究センター、エネルギー物質科学研究センター、宇宙史研究センター、プラズマ研究センター、等)に所属し、多方面にわたる研究を推進しています。

物理学類で学ぶ(学類長から新入生に向けて)

皆さんの多くは、高校で「物理」を履修してきたことと思います。そして、「物理」の単純さに心を惹かれたのではないでしょうか。例えば、ニュートンの運動法則(力=質量×加速度)という一本の式が、いろいろな事象を説明します。もしそうであるならば、皆さんは「物理」の本質に触れたということかもしれません。

そうはいっても物理が奥深いものです。高校での「物理」と大学での「物理」の違いは、言語にあります。皆さんは物事を考えるときは、もちろん、日本語ですよね。でも、物理を考えるときは、世界の共通言語である数学(数式)で考えます。なぜ数学かといいますと、数学が最も厳格であり最も論理的な言語だからです。数学には感情の入り込む余地はありませんし、世界中の誰が見ても一義的にしか読み取れません。ですので、大学では、物理学を学ぶために、数学をしっかりと学習します。日本史を学ぶために日本語をしっかり学習する、そういった感じです。物理学の問題(これは日本語)を数式に翻訳し、数式を数学のルールに従って変形し、最終的な数式の意味するところを(日本語に置き換えて)理解する、こういった訓練を行います。この訓練にとって、高校でも履修する「力学」と「電磁気学」は、よい教材となります。

「力学」と「電磁気学」はよい教材ですし、現代社会を支えている基盤学問です。ロケットを飛ばすのも、巨大構造物を作るのも、電気を作るもの、こうした学問のおかげです。ですが、これらは19世紀の学問であり、現代物理ではありません。大学では、現代物理学を学びます。例えば、「量子力学」では、あらゆるものは波動性と粒子性を兼ね備えている、ということを学びます。この話を最初に聞いた人は、??となることと思います。でも心配しないでください。みんな初めはそんなものです。この話を現実のものとして受け入れられるようになるのは、量子力学的な考え方が固体中の電子の振る舞い(Naは金属だけど、Siは半導体)を見事に説明することを聞いてからでしょう。

物理学類のカリキュラムの特徴は、(1)物理学のしっかりとした基礎を築くこと、(2)現代物理学の幅広い知識を得ること、そして、(3)学んだ物理学の知識を応用すること、にあります。1年次から2年次の前半までは、数学と「力学」、「電磁気学」を通じて、物理学の基礎を築きます。2年次から3年次までは、「量子力学」「統計力学」「相対性理論」といった、現代物理学を幅広く学びます。4年次には、卒業研究で各自に研究テーマが与えられ、それまでに学んだ物理学の知識を応用します。